AIツールを入れすぎて分からなくなったので整えました|AI研修の実施事例
AI活用を始めて3週間で10種類のツールを導入し、「どこで何が動いているか分からない」状態になった方に実施した6時間マンツーマン研修の記録。新しいツールを増やさず整える方針、AIの全体地図7階層、触ると危ない物リスト6項目、実機で作った3フォルダ構成、30日ロードマップまで公開します。
AI活用を始めて約3週間で10種類のAIツールを導入し、「どこで何が動いていて、何を触ると危ないのか分からない」状態になっていた T様に、当社は6時間のマンツーマン研修(AI個別レクチャー)を実施しました。 方針は徹底した引き算です。新しいツールも新しい機能も一切増やさず、既にあるものを安心して使える状態に整える。中核に置いたのが「AIの全体地図(7階層)」でした。
本記事の内容は、事前に作成したカリキュラムと分単位の進行台本に沿って進めた1日の中身です。どのモジュールを、どの順で、何を触りながら進める設計だったかを、その台本に基づいて公開します。なお、当日の逐次記録は残していないため台本に無い出来事は書いておらず、受講後の定着状況や削減時間といった数値も当社で記録していないため掲載していません。
TL;DR(45秒サマリ)
- 受講前:AI活用歴 約3週間、プログラミング経験なし。それでも10種類のAIツールを導入し、複数の案件を自力で動かしていた行動力の持ち主。
- 課題:「どこで何が動いているか/何を触ると危ないか/次に何をすべきか」が分からない。
- 当日の方針:新しいツールや機能を増やさない。既にあるものを、安心して使える状態に整える。
- 実施内容:10:00–17:00 で M0〜M6 の7モジュール。中核は「AIの全体地図」7階層(①ローカル ②ブラウザ ③ターミナル ④Git/GitHub ⑤API ⑥MCP ⑦AIエージェント+外部連携)。
- 持ち帰り資料:全体地図/用語チートシート/触ると危ない物リスト/対処フロー/30日ロードマップ/整理のビフォーアフター の6点。
「ツールを入れすぎて分からなくなる」は、むしろ行動が早い人に起きる
当社にいただくご相談のなかに、「AIツールは一通り入れた。動いてはいる。でも、自分が何をしているのか分かっていない」というタイプがあります。今回の T様のケースは、まさにこれでした。
念のため申し添えると、これは能力の問題ではありません。むしろ行動が早い人ほど起きます。 情報を集めて片っ端から試せる人は、理解が追いつく前に環境だけが先に育つからです。T様も、AI活用歴3週間の時点で10種類を導入し、複数の案件を自力で動かしていました。止まっていた人には起きない詰まり方です。
| 項目 | 受講前の状態(ご本人回答) |
|---|---|
| AI活用歴 | 約3週間(プログラミング経験なし/端末は Mac) |
| 導入済みAIツール | ChatGPT / Claude / Codex / Claude Code / Cursor / GitHub / Obsidian に加え、AIエージェント・生成系サービス・通知連携を含めて 合計10種類 |
| 実際の活用 | AIコーディングツールを中心に、いくつかの案件を自分なりに動かしている |
| つまずき | PC操作で分からないことを都度AIに聞きながら進めており、仕組み・概念の理解そのものがストレスになっている |
注目すべきは、「使えていない人」ではないことです。3週間でここまで環境を作り上げる行動力があり、足りなかったのは知識量ではなく メンタルマップ(全体地図) でした。ご本人の言葉での課題はこうです。
どこで何が動いていて/何を触ると危ないのか/次に何をすればいいのか が分かりにくい。
ご要望は 「自分のPCを実際に見てもらい、散らかり具合を確認・整理してもらいながら概念を講義してほしい」。座学ではなく、実機を触りながらの整流でした。そこで当日は、T様ご自身の Mac を画面共有していただき、すべての操作をご本人の手で行っていただく形で進めています。
当日の方針:足し算ではなく「引き算と整流」
最初に決めたのは、やらないことです。
このコースの方針:新しいツールや機能を増やすことはしない。「既にあるものを、安心して使える状態に整える」ことに全力を注ぐ1日。
AI研修の多くは「新しくできること」を増やす設計です。しかし、すでにツールが10個入っていて全体像が見えていない人に11個目を渡しても、混乱が増えるだけ。ここでは逆に、カリキュラムから新機能・新ツールを完全に排除しました。そのうえで当日のミッションを4つに固定し、ご要望を到達目標に翻訳しています。
| ミッション | ご要望(ヒアリング) | 当日の到達目標として置いた水準 |
|---|---|---|
| 地図を渡す | 階層構造を理解したい | 1枚の「全体地図」で、各ツールが"どこで動くか"を自分の言葉で説明する |
| 実機を整える | 散らかったPCを整理したい | デスクトップ/フォルダ/プロジェクト/認証情報を整流する |
| ガードレールを付ける | 何を触ると危ないか分からない | 「触ってはいけない物リスト」と事故防止の仕組みを持ち帰る |
| 次の一歩を示す | 次に何をすればいいか分からない | 今後30日のロードマップ+日々のチェックリストを持ち帰る |
当日の進行:10:00–17:00 の7モジュール
実際のタイムテーブルは次のとおりです。休憩を挟みながら、実働6時間で M0 から M6 までを順に進めました。
| 時間 | モジュール | 区分 | ねらい |
|---|---|---|---|
| 10:00–10:20 | M0. オープニング & ゴール合わせ | 対話 | 安全宣言と、未回答ヒアリング項目の確認 |
| 10:20–11:10 | M1. AIの全体地図 | 講義 | 7階層のメンタルマップを渡す(最重要) |
| 11:20–12:15 | M2. Macの棚卸し | ハンズオン | 散らかりを見える化し、地図上に配置する |
| 13:15–14:15 | M3. 整理整頓ハンズオン | ハンズオン | フォルダ/プロジェクトを整える |
| 14:25–15:20 | M4. 触ると危ないもの | 講義+実機 | 事故防止の仕組みを入れる |
| 15:30–16:20 | M5. メンテナンスの型 | ハンズオン | 始め方・困ったときの手順を練習する |
| 16:20–17:00 | M6. 30日ロードマップ & 質疑 | 対話 | 次の一歩を明確にして終える |
板書は、ご本人がすでに使っているノートアプリの当日ノートに集約しました。新しい資料フォーマットを増やさず、既存の道具にそのまま溜める——ここでも方針は引き算です。当日ノートには開始前に次の見出しだけを用意しておき、進行に合わせて中身が埋まっていく形にしています。
## 1. AI全体地図
## 2. 現状マップ(棚卸し)
## 3. 整理ルール
## 4. 触ると危ない物リスト
## 5. 困ったときの手順
## 6. 30日ロードマップ
## あとで調べるリスト
M0:最初の20分でやったのは「安全宣言」
冒頭5分のアイスブレイクのあと、続く5分で行ったのが 安全宣言 です。
今日は何も壊しません。消すときは必ず退避します。分からない操作は一緒にやります。
実機を見せていただく研修では、これを先に言うかどうかで画面共有のハードルが変わります。そのうえで、事前ヒアリングシートで未回答だった項目(業種・役職・よく使うソフト・時間がかかっている作業・自動化したい業務・動かしている案件の中身など)を口頭で埋め、最後の3分で当日ゴールの優先順位をご本人に番号付けしていただきました。優先順位を講師が決めないのが、ここでの要点です。
中核:「AIの全体地図」7階層(M1・50分)
ここからが本記事の主役です。このフレームワークは、研修を受けなくても読者ご自身で描けます。 紙かノートアプリを開いて、一緒に描いてみてください。当日は50分を4ステップに割り振って進めました。
ステップ1:横線を1本引き、世界を2つに割る(8分)
紙の中央に横線を1本引き、左に ローカル(自分のMacの中=自分の家・机)、右に クラウド(インターネットの向こう=外の倉庫・お店) と書きます。「手元か、向こう側か」——この2分割さえ握れれば、混乱の大半は整理できます。最初の8分は、この1本の線だけに使いました。
ステップ2:7つの階層を、必ず「たとえ話」とセットで置く(22分)
次に、線の上へ7つの階層を配置します。専門用語は必ず比喩とペアで出すのがポイントです。当日は1行ずつ、比喩 → ご本人の実例、の順で進めました。
| # | 用語 | どこで動くか | たとえ話 | 具体例 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | ローカル | 自分のMacの中 | 自分の家・机 | デスクトップ、フォルダ、ノートアプリ本体 |
| 2 | ブラウザ | ローカルから外を見る窓 | 家の窓・玄関 | Chrome、ChatGPTのWeb画面、GitHubのサイト |
| 3 | ターミナル | ローカル(黒い画面) | 業務用の作業台 | Claude Code / Codex を動かす場所 |
| 4 | Git / GitHub | Git=ローカル/GitHub=クラウド | Git=セーブ機能、GitHub=貸金庫+共有棚 | 案件のコードの保存・履歴 |
| 5 | API | クラウドのサービス入口 | お店の"業務用裏口"、APIキー=その合鍵 | 各AIサービスへの課金接続 |
| 6 | MCP | エージェントに道具を持たせる規格 | 工具を差し込む共通コンセント | Claude Code にファイル操作などの道具を追加 |
| 7 | AIエージェント | ローカルで指示を実行する実行役 | 住み込みの助手 | Claude Code / Codex |
| + | 外部連携 | 助手が外のサービスに連絡する線 | 助手が外部に電話・通知する | チャットへの通知、生成サービスの呼び出し |
多くの初心者がつまずくのは、「AIエージェントはローカルで動いている」という一点です。Claude Code はターミナル(自分の家の作業台)で動く助手であって、頭脳そのものではありません。頭脳はクラウドの向こう側にあり、そこへ入る合鍵がAPIキーです。この区別がつくと「なぜAPIキーが漏れると勝手に課金されるのか」まで一本でつながります。詳細は Claude Code とは?2026年の完全ガイド と Claude Code × MCP:実務で使える10のサーバー に整理しています。
あわせて、持ち帰り用の 用語チートシート も同じ比喩で揃えました。ローカル=自分の家/クラウド=外の倉庫/ブラウザ=家の窓/ターミナル=業務用カウンター/Git=ゲームのセーブ/GitHub=貸金庫+共有棚/API=お店の裏口/APIキー=合鍵/MCP=工具を差すコンセント/AIエージェント=住み込みの助手/外部連携=助手が外部に電話/リポジトリ=案件ごとのバインダー、の12語です。
ステップ3:データの流れを1本の線でなぞる(12分)
階層を並べただけでは腑に落ちません。そこで、次の1本線を矢印で描きました。
自分(ローカル)→ 指示 → AIエージェント(助手)→ 必要なら → API(合鍵で裏口)→ クラウドのAI → 結果が返る
途中の保存は Git / GitHub。道具の追加は MCP。外への通知は 外部連携。
「あなたが助手に頼む → 助手が動く → 賢い頭脳に聞きに行く → 戻ってくる」。この往復だけです。ここに12分を使いました。
ステップ4:自分のツールを、自分の手で地図に置く(8分)
ここが最も重要な時間です。講師が配置してみせるのではなく、ご本人が10個のツールを地図の①〜⑦のどこかに書き込む 8分を取りました。間違えても構いません。講師は「これは窓(ブラウザ)ですか? 助手(エージェント)ですか?」と問いで誘導するだけに留めています。読者の皆さんも、ご自身のツールで試してみてください。手が止まったところが、そのまま今の理解の穴です。
M2:Macの棚卸し——この55分は「触らない・記録する」
M1で地図を渡したあと、その地図の上にご本人の実機を載せる時間です。ここでの原則は明確で、この時間は整理しません。動かすのも消すのも次のM3で、M2は観察と記録に徹しました。
- フォルダ観察(15分):デスクトップ/ダウンロード/書類を順に開き、散らかり度を5段階でノートに記録。「場所/散らかり度/中身メモ/要対応」の4列で 現状マップ の表を作る
- アプリ棚卸し(10分):Dock と Launchpad を眺めて入っているアプリを挙げ、「これは地図のどこ?」とM1の7階層に紐づけて分類する
- プロジェクトの在りか探し(15分):Finder のホームを開き、AIコーディングツールで動かしている案件フォルダが何カ所に散っているかを記録する
- ターミナル初体験(10分):表示系3コマンドのみを1つずつ体験する
- 現状マップの完成(5分)
ターミナルの初体験は意図的に絞り、使ったのは pwd(今どこにいるか)・ls(何があるか)・open .(今の場所をFinderで開く)の 表示系3コマンドだけ。作る・消す・移動は一切していません。
黒い画面は怖くありません。今どこにいて、何があるかを見ているだけです。
配布した「安全なコマンド早見表」でも、pwd / ls / open . / cat は「◎ 表示だけ」、cd は「◎ 移動だけ」、mkdir -p は「○ 作るだけ(消さない)」と安全度を明示し、rm -rf と git push --force は ✗ 使わない と書き切りました。基礎は 非エンジニア向け Claude Code 使い方基礎編 が参考になります。
M3:実機の整流——フォルダは3つだけ、そして「消す前に必ず退避」
昼休憩を挟んだ午後1時間で、M2で見える化した散らかりを整えました。置き場はシンプルさを最優先し、次の3つに絞っています。
~/Projects/<案件名>/ ← 案件はここだけ
~/Documents/ ← 資料・データ
~/_archive/日付/ ← 迷ったものの退避先
作成もご本人の手で、ターミナルから行いました。
mkdir -p ~/Projects # 開発・案件はすべてここに集約
mkdir -p ~/_archive # 迷ったものの退避先
open ~ # ホームをFinderで確認
そして、全モジュールを貫通する共通ルールを1つ置きました。
消す前に必ず退避。 削除は当日行わず、日付つきの
_archiveフォルダへ移動する。1〜2週間様子を見て、問題なければ後日ご本人が削除を判断する。
これは技術的な工夫ではなく、心理的な安全弁です。「消す」判断を当日に迫らないことで、迷ったファイルを即断で退避でき、作業が止まりません。移動でツールが案件を見失っても、元に戻せば復旧できます。
この安全弁を置いたうえで、後半の25分はデスクトップの仕分けを1回やり切る時間に充てました。ファイルを「①Projects ②Documents ③_archive」の3択でドラッグ移動するだけ。迷ったものは即 _archive へ送り、判断で手を止めないようにしています。アプリのエイリアスやスクリーンショットは無理に動かさず、判断に迷うものは触らずメモに残しました。
続く10分で、散らばっていた案件フォルダを ~/Projects/ 配下へ集約。ただし 移動して壊れないものだけ に限定し、Git管理下のフォルダや各ツールが参照しているフォルダは「移動せずメモ」に回して、当日は安全に動かせるもの1件でデモを行いました。最後の5分で Dock を使う順に整え、ビフォーアフターのスクリーンショットをノートに貼っています。
M4:ガードレール——「触ると危ない物リスト」6項目
地図の次に厚く時間を取ったのが事故防止です。怖がらせるのではなく、不安をルールに変換するのが狙いでした。最初の15分でリストを読み合わせ、そのままノートに保存しています。
| 危険物 | なぜ危ないか(たとえ) | ルール |
|---|---|---|
| APIキー / トークン | 家の合鍵。漏れると勝手に課金・悪用される | 画面共有・チャット貼付・GitHub公開で絶対に出さない |
.env などの設定ファイル | 合鍵をしまう引き出し | 中身を人に見せない。GitHubに上げない(.gitignore) |
rm -rf(強制削除) | シュレッダー。戻せない | 使わない。消すときはゴミ箱/退避フォルダへ移動 |
git push --force | 履歴ごと上書き | 自分では使わない。普通の保存で十分 |
| 課金・サブスク | 蛇口が開きっぱなし | 月1回、課金状況を確認する |
| 「同意しますか?」系の確認 | 助手への"実行GOサイン" | 内容を読んでからOK。分からなければ止める |
続く35分は実機での確認に使い、次の3点を行いました。
- APIキーは実物を画面に出さず、"在りか"だけ確認する(15分)。 設定ファイルは開かずに指差しで共有し、
cat .gitignore | grep envで.envが無視対象に入っているかを表示のみで確認する - AIエージェントの実行確認(許可を求める)モードがオンかを一緒に確認する(10分)。 そのうえで、実行前に「これは何をするコマンド? 日本語で説明して」とAI自身に聞く習慣を入れる
- バックアップの状態を実機で確認する(10分)。 システム設定からバックアップ先が設定されているかを確認し、あわせてクラウド同期でデスクトップ/書類が同期されているかも見る
「戻せる」と分かっていれば思い切って作業できる——この土台をつくることが、M4でいちばん大きなねらいでした。
最後の5分では、AIチャットに 貼っていい情報/ダメな情報 を2列で板書しています。OK例は一般的なエラーメッセージ・サンプルコード・公開情報、NG例は顧客名・個人情報・APIキー・パスワード・契約書の中身です。法人での運用ルールづくりは AI研修 法人導入ガイド でも扱っています。
M5:「次に何をすればいいか分からない」を手順に変える
不安の正体は、多くの場合「毎回ゼロから判断している」ことです。そこで午後の50分で、2つの型を実機で1周しました。
新しいプロジェクトの始め方(4ステップ) は、手順を声に出しながらご本人に打っていただきました。
mkdir -p ~/Projects/practice-<日付> # ① 置き場を作る
cd ~/Projects/practice-<日付> # ② そこへ移動する
echo "# 練習用:今日学んだ型の確認" > README.md # ③ 何を作るかを1行書く
open . # ④ Finder で確認する
そのうえで「ここでAIエージェントを起動する」流れをお見せし、区切りごとに保存する(Gitの「セーブ」)という概念まで説明しています。Git 操作そのものには当日は深く踏み込まず、デモに留めました。
困ったときの対処フロー(4ステップ) は、板書して終わりにせず練習まで行いました。
- エラー文をそのままAIに貼って「日本語で何が起きてる?」と聞く
- 直し方は 1回に1つだけ 変える
- ダメなら、触る前の状態に戻す
- 30分悩んだら手を止めて記録し、後で相談する
練習ではわざと存在しないコマンドを打ってエラーを出し、①の「AIに貼って聞く」を1回やっていただきました。フローは読むだけでは身につきません。実際にエラーを出して1周させることで、「詰まる」が事故ではなく手順の入口になります。
②の「1回に1つだけ」が、初心者が最も事故りやすい箇所への対策です。複数を同時に変えると、何が効いたのか分からなくなり、戻すこともできなくなります。
さらに、日次(作業前にデスクトップを片付ける/作業後に保存)と週次(不要ファイルを _archive へ退避/課金状況をチェック/アプリ更新)のメンテナンス習慣を、曜日まで決めてカレンダーまたはノートアプリのタスクに登録しました。アップデートとの付き合い方も「更新が来ても作業中は入れない、区切りのいいタイミングで更新する」と1文で決めています。
M6:30日ロードマップと「やらないことリスト」
研修の価値は当日ではなく翌日以降に出ます。最後の40分は、次の30日を箇条書きに落とす時間に使いました。ロードマップはご本人と合意して確定し、各週の実行曜日をカレンダーに入れています。
| 週 | テーマ | アクション |
|---|---|---|
| 1週目 | 定着 | 決めたフォルダ構成・退避ルールを毎日使う/地図を1日1回見返す |
| 2週目 | 1案件を最後まで | 動かしている案件を1つ、開始→保存まで型どおりに回す |
| 3週目 | 安全運用 | 課金確認・バックアップ確認・APIキーの棚卸し |
| 4週目 | 広げる | 新しいツールを 1つだけ 追加し、地図のどこかに位置づける |
4週目に注目してください。新ツールの追加を「1つだけ」に制限し、しかも 地図のどこに属するかを言語化してから入れる 条件を付けています。「入れすぎて迷子」の再発を防ぐためです。
対になる 「やらないことリスト」 も確認しました。①一度に複数のツールや設定を同時にいじらない ②意味の分からないコマンドを実行しない ③鍵を人に見せない ④rm -rf と git push --force を使わない、の4つです。
続く質疑では、当日ノートに溜めた「あとで調べるリスト」を上から消し込み、残ったものは宿題として明記。最後に持ち帰り資料6点(①全体地図 ②用語チートシート ③触ると危ない物リスト ④困ったときの対処フロー1枚 ⑤30日ロードマップ ⑥現状マップ→整理後マップのビフォーアフター)が揃っているかを一緒に確認して終えました。
なお、この日の到達目標は「知識量」ではなく 「明日から不安なく自分のプロジェクトに集中できる状態」 に置いていました。その後の定着状況は当社では追跡・記録していないため、本記事には記載していません。
進め方のルール:講師は代行操作をしない
この手の研修で最も効くのは、実はカリキュラムの中身より 進め方のルール でした。当日は次を徹底しています。
- 講師は代行操作しない。 ご本人の手で操作していただき、講師は横で言語化する
- 専門用語は必ずたとえ話とセット。 1モジュールで新しい用語は最大3つまで
- 各モジュール末に「ここまでを一言で説明すると?」 とご本人に要約していただき、定着を確認する
- 冒頭で「安全宣言」を行う。 「何も壊しません/消すときは必ず退避します/分からない操作は一緒にやります」と先に伝え、画面共有の心理的ハードルを下げる
講師が代わりに操作すれば、その場は速く進みます。しかし翌日ご本人の手元には何も残りません。速度ではなく再現性を取る、という判断です。
時間が押したときの優先順位を、先に決めておく
ハンズオン研修はほぼ必ず時間が押します。そこで削る順を事前に決めて臨みました。
M1(地図)> M4(安全)> M2/M3(整理)> M5(型)> M6(ロードマップ)
最低でも「地図」「触ると危ない物リスト」「最初の1歩」は必ず持ち帰っていただく。
削る順を決めていないと、講師はその場で「進みやすいところ」を優先してしまい、最重要項目が最後に飛ぶ——という事故が起きます。
事前に用意しておいた「つまずき」への対応
想定されるつまずきと対応も、台本に先に書き込んだうえで当日に臨みました。正直に言えば、これらは起きる前提の準備です。
| 想定したつまずき | 準備した対応 |
|---|---|
| 用語で頭が固まる | 比喩だけ先に固定し、正式名称は後回し。「助手」「合鍵」で会話を回す |
| 案件フォルダが見つからない | 各AIツールの「最近開いたプロジェクト」履歴から場所を逆引きする |
| フォルダ移動でツールが案件を見失う | 元の場所に戻せば復旧できる(だから削除せず"移動"に留める) |
| 整理する量が多すぎて終わらない | デスクトップ"だけ"やり切り、残りは週次習慣へ送る |
| バックアップが未設定の場合 | 当日は深追いせず、30日ロードマップの宿題に回す |
| コマンドのタイプミスで止まる | そのエラー文を対処フローの練習台にして、「フローを使えば怖くない」を体験に変える |
| 機密ファイルが画面に映りそう | 共有前に講師が先回りして「ここは飛ばしましょう」と伝える |
この研修が向く人・向かない人
| 向く | 向かない | |
|---|---|---|
| 状態 | ツールは入れたが全体像が見えていない | まだ何も導入しておらず、最初の1本を選びたい |
| 目的 | 安心して自分の案件に集中したい | 特定業務の自動化スクリプトを作り切りたい |
| 形式 | 自分の実機を見てもらいながら整流したい | 座学で体系知識を先に入れたい |
「まず何を入れるか」から始めたい方は Claude Code のインストール手順、法人として複数名に展開したい方は Claude Code 法人研修の選び方7チェックリスト と 研修ページ をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
Q. この記事に、受講後の成果や削減時間が書かれていないのはなぜですか?
本記事に書けるのは、当日用に作成したカリキュラムと分単位の進行台本に定義された内容までだからです。 受講後の定着状況・削減時間・費用対効果といった数値は当社で追跡・記録しておらず、受講者ご本人の感想やその後の活用状況も同様に記録がありません。書ける事実の範囲を明示したうえで公開しています。
Q. AIツールを入れすぎて分からなくなっています。まず何をすべきですか?
新しいツールの追加を一旦止め、全体地図を1枚描くことをおすすめします。紙の中央に横線を引き、左をローカル(自分のPCの中)、右をクラウド(インターネットの向こう)と分けたうえで、本記事の7階層を置き、今使っているツールを自分の手で配置してください。手が止まった場所が、いま埋めるべき理解の穴です。
Q. ターミナルは、まず何から覚えればよいですか?
当日ターミナルで最初に触れたのは、pwd(今どこにいるか)/ls(何があるか)/open .(今の場所をFinderで開く)の表示系3つだけ です。作る・消す・移動は次の段階に回しました。逆に rm -rf と git push --force は「使わない」と最初に明示しています。取り消せない操作を先に禁止しておくことが、最初のうちは最大のガードレールになります。
Q. 個人でこの研修を受ける場合、助成金は使えますか?
個人(個人事業主ご自身やフリーランスの方)が受講する場合、人材開発支援助成金の対象にはなりません。 同助成金は、事業主が雇用する労働者に訓練を実施する場合の制度だからです。加えて、本記事で扱う 1日6時間のマンツーマン形式は、同助成金で求められる「実訓練時間10時間以上」を単独では満たしません(法人向けには2日間・計11時間の研修をご用意しています)。なお本事例そのものについては助成金の適用可否を確認していないため、この事例をもって「対象になる」と申し上げるものではありません。法人として従業員に受講させる場合、当社は訓練実施機関として提供すべき書類(訓練カリキュラム・見積書・契約書・修了証・出席簿・様式第12号など)を作成・提供しますが、職業訓練実施計画届や支給申請書の作成・提出は行いません(貴社または委託される社会保険労務士が実施されます)。詳細は AI導入・研修で使える助成金2026 をご覧ください。最終的な受給可否は所管労働局の審査によります。
Q. 1日で全部やり切れますか?
ハンズオン研修の時間はほぼ必ず押します。そのため本カリキュラムでは削る順(地図 > 安全 > 整理 > 型 > ロードマップ)を先に決め、最低でも「地図」「触ると危ない物リスト」「最初の1歩」は必ず持ち帰っていただく形にしました。「全部やる」より「型を1つ完成させて持ち帰る」を優先する考え方です。
AIツールを増やす前に、いま動いているものの地図を持つ。それだけで「何を触ると危ないか」「次に何をすべきか」は、驚くほど言語化しやすくなります。まずは紙1枚に横線を引くところから試してみてください。AIエージェントの全体像は AIエージェントとは? もあわせてどうぞ。
本記事は、当社が作成した当日用カリキュラムおよび進行台本に基づいて構成しています。受講者ご本人の内容確認と掲載許諾を得たうえで公開します(許諾が確認できるまで公開しません)。 ご本人が特定されないよう、氏名・社名・屋号・実施日・実機の具体的な内容(フォルダ構成、ファイル名、セキュリティ設定の状態など)は 一切掲載していません。受講料・業務データ・経営数値も掲載していません。また、受講者ご本人の感想・受講後の成果は記録がないため掲載していません。
5 年の事業責任者キャリアと、ここ 2 年の生成 AI 業務改善を主戦場に、Claude Code を含む AI ツールの組織導入・プロンプトチューニング・PdM/PM を専門とする。YouTube『【アイ】のAIでできるチャンネル』で AI 活用ノウハウを継続発信中。
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