AI活用交流会 #3 — 機密データにAIをどう触らせるか
2026年10月1日のオンライン回の記録。人事データや給与のような機密情報にAIエージェントを触らせるとき、プロンプトで止めるのではなくデータ側のアクセス権で守る——という設計の話を軸に、ローカルLLMの使いどころ、サブエージェントの是非まで扱いました。
2026年10月1日(木)20時。オンライン回の3回目です。
この日の中心になったのは、人事データや給与のような機密情報に、AIエージェントをどこまで触らせていいのかという話でした。実務で金融機関や製薬会社の現場に入っている参加者が持ち込んだ悩みから始まり、2時間かけて「どう守るか」の設計まで降りていきます。
この回から、宣言は「直す」か「話す」の2択に
冒頭15分は、毎回おなじみの「今日やることの宣言」です。この回からはAとBのどちらかを選ぶ形にしました。

- A 直す … 今日どれを直すか(記事・動画・投稿など1本に絞る)。22時にどうなっていたら「直せた」か
- B 話す … みんなと話したい。こういう話題を話したい
手を動かす日にしてもいいし、人と話す日にしてもいい。**「それも立派な過ごし方です」**とスライドに書いてあるとおりで、この回は結果的にBが厚くなりました。
運営の吉永も、この日は本業で商用リリースの監視があり、PCを2台並べて待機しながらの参加でした。
宣言された「今日やること」
- ローカルで動かすLLMエージェントの調整(IT技術支援)— サンドボックスでホストファイルへのアクセスをどこまで制限するかを確定させる
- 読書向けアプリの設計見直し(インフラエンジニア)— 音声読み上げの品質比較と、写真から文字を読む機能をやめる判断
- IDEを入れ替えて複数エージェントを運用できるか検証(社内システム担当)— 8GBのMacでは重いのでWindows環境で試す
- HTMLスライドをPowerPointに変換する仕組み(ライター)— 職場で配るには、ブラウザで直すよりPowerPointのほうが通る
- LINE WORKSを入口にした業務支援システムの試作(エンジニア)— 電話で受けた予定や現場写真を日報にする
- 株式の自動取引ツール(営業職)— Windowsアプリとして、証券会社のAPIを使って組む
機密データにAIをどう触らせるか
相談はこうでした。人事データや給与のようなデリケートな情報に、AIエージェントがアクセスしてしまうのをどう防ぐか。
運営からの回答は明確で、プロンプトで「見るな」と書いて止めるのは解決策ではない、というものでした。守るべきはデータ側です。
- アクセス制御リスト(ACL)でガードする — 誰(どのアカウント)が何を読めるかをデータ側で決める
- 環境を分離する — 役職やレイヤーに応じてアカウントを分ける
企業のエンタープライズ環境では、この形で比較的抵抗なく導入が進んでいる、という実情も共有されました。一方で、古い監査や地方の組織では、論理的な分離ではなく物理的にハードディスクを分けることを求められるケースが現実にあるという指摘もあり、そこは運営も驚いていた部分です。
この流れで、DGXをアタッシュケースに収めて顧客の現場に持ち込むというソリューションの話も出ました。ネットワークから隔離された状態で、膨大なログの分析をその場で回す。金融機関や製薬会社のように制約が強い環境では、物理的に持ち込める形そのものが効く、という発想です。
ローカルLLMの本当の利点は「消したと証明できる」こと
関連して、ローカルで大規模言語モデルを動かす意味についても議論になりました。
クラウドのモデルとの決定的な違いは性能ではなく、データの消去を自分でコントロールでき、消したことを証明できる点だ——というのが、実際にローカル環境を運用している参加者の主張です。サンドボックスによる完全な隔離に加えて、この「証明できる」が効く場面がある、と。
ハードウェアの比較も具体的でした。メモリ256GBのDGXと、Apple Siliconのマシン。プリフィル(読み込み)側の速度では前者が有利でも、デコード(出力)側ではMacのアーキテクチャに軍配が上がるという実感が共有されています。
AI同士を喋らせるより、ファイルを渡したほうがいい
複数のプロジェクト(アプリ、サーバーAPI、認証、クラウド管理)を担当するAI同士のやりとりを自動化したい、という相談も出ました。チャットツールで実現しようとすると、エンタープライズ版が必要で1アカウント5,000円かかる、という具体的なコストの話です。
これに対する回答は、ローカルで完結するなら、ObsidianやローカルファイルをAI同士で直接受け渡したほうが精度が高く、コストも抑えられる。
さらに踏み込んで、AI同士の自律的な対話は実用化が難しいという話にもなりました。ファシリテーター役と会議役のAIを作って喋らせると、同じ回答がループしてしまう。音声のリアルタイム処理も、音声認識のハルシネーション(言っていない「お疲れ様でした」などが混ざる)でAIが誤反応する。**「ロマンの領域にとどまる」**というのが、この日の結論でした。
サブエージェントは、使わないほうがいい場面のほうが多い
自動取引ツールの開発相談から、サブエージェントの使いどころの話になりました。
運営の見解は、大規模な調査とゼロからの実装以外では、サブエージェントを使わないほうがいい。代わりに勧められたのは、スモークテストで機能が一通り動くことを確認することと、適切なモデルを選ぶことでした。
修正を依頼するときのコツも出ています。該当箇所のスクリーンショットを撮って、言葉での説明と一緒に渡す。 文字だけで場所を説明するより、はるかに速く通じます。
「文系の事務職でも、対面の交流会に出ていいですか」
この日いちばん印象に残ったのは、この質問でした。対面イベントの案内が「PM・エンジニア向け」と書いてあるので、参加しづらい——という率直な声です。
回答は、当初は専門職を想定していたが、実際には建設業界をはじめ多様な方が来ていて、現場でのAI活用の話を自由に交換している。職種は問わない、というものでした。
実際、この日のオンライン回も、インフラエンジニアと営業職とライターが同じ場で話しています。聞きにくいことをその場で聞けて、その場で前提が訂正される——この質問と回答のやりとり自体が、この場の性格をよく表していたと思います。
その日の着地
- HTMLスライドをPowerPointに変換する作業が進み、崩れの少ない再現までできた(画面共有で発表)
- 出張旅費の精算ツールは、企画書の作成まで着手
- 関わっているアプリのサービスローンチ当日で、その場はデバッグに追われていた
- 環境の切り替えで意図しないワーカーが動いてしまう問題を特定し、修正
- 難しいと感じていたタスクに、強制的に時間を作って着手できた
「完成しました」より「ここまで来て、ここで止まっています」が並ぶのは、この場のいつもどおりです。
次回へ
次回のオンライン回は10月15日(木)20時から。あわせて、10月24日(土)13時から15時に対面の交流会も予定しています(二次会は16時頃まで)。前の回の記録はAI活用交流会 #2をご覧ください。
掲載について:各回の冒頭で、活動の様子をサイトやブログで公開する方針と、顔・お名前・画面にモザイクをかけたうえで載せることをご説明し、ご希望されない方は理由を問わず個別にご連絡いただくようお願いしています。本記事では参加者のお名前・ハンドル名は掲載せず、職種までの粒度に留めています。録画と議事録は会員の方にのみお渡ししているもので、公開はしていません。
ほかの回のレポート
一人だと続かなかった、を仕組みで変える場所
月2回・第1-3木曜の 20:00–22:00 に集まって、各自が自分の仕事を題材に手を動かします。 会員限定の Discord と、月1回の同業交流会(対面)も。第一期の募集は終了しました。第二期の募集が決まりましたら、ご案内リストの方へ最初にお知らせします。


